おじさんの器の大きさに感涙

 

皆様こんにちは

LUKAでございます

 

 

新しい会社へ入社して早々から

電話応対を勝手に始めた私

 

「今電話に出始めたって

 三カ月後から電話に出始めたって

 分からないレベルは大差ねぇ」

 

と思っていた

 

 

 

生意気言ってすんませんでした・・・!!!

 

 

いやーびっくりするくらい分からない電話を取ったんですよ

 

本当にね

人生で一番分からない電話だったんじゃないかなぁ

 

後にも先にも

これ以上に分からない電話に出る事は

きっと無いような気がする

 

 

それはある日の朝の出来事だった

 

 

トゥルルッ!と電話の音が鳴り響き

いつものように余裕綽々で電話を取った私

 

 

私「おはようございます

  〇〇会社ルカでご」

婆「あんねぇ!!!?

  ちょっといいかい!!!?」

私「ざいます・・・はい

  どのようなご用件でしょうか?」

 

婆「あのねぇ電気が欲しいのさ!!!」

 

 

電気が・・・・・・

 

 

欲しい・・・・・・・・・?

 

 

第一声から分からない日本語を突きつけられ

メモを取ろうとした手が止まる

 

 

電気・・・って・・・

 

ピカチュウがバリバリバリッ!っとやるやつ・・・?

 

 

それとも・・・電器・・・?

 

 

私「電気、でございますか?」

 

婆「おたくなんでもやってるんでしょ!?」

 

 

何でもなんてやってねぇよ

 

 

主にライフライン関係のあれこれはやってるけど

何でもなんかはやっちゃいねぇ

 

 

あぁ・・・!

ただちょっとトリッキーな動きをするおじさんが一人居て

その人は確かに何でもやるね!?

 

社長の理想としては

『何でも屋』のようになって

困っている人たちを助けつつ

そうやって知名度を上げていきたいらしい

 

 

私が住んでいる地域は本当にド田舎で

若者の流出はもう随分前に起こり

高齢者が圧倒的に多い・・・いや

多過ぎるほどの地域である

 

だから

 

「雪かき辛いんだわー!」

とか

「網戸の立て付け悪いんだわー!」

とか

「なんかドアノブがちゃがちゃするんだよねー!」

とか

お年寄りの悩みが尽きない

 

なんだけど

もちろん「何でも屋」なんてものも存在しておらず

 

この会社でただ一人

そういうトリッキーな事をやっているおじさんが居るのだ

 

 

時には自分で除雪に出向き

時には自分で網戸の立て付けを調整し

時には自分でドアノブを買ってきて交換してあげて

 

先日はテレビの配線をやってあげて

その前はパソコンの中の不要なデータを消してあげていた

 

 

そのおじさんの噂を聞いて電話をよこした人かもしれない・・・

 

だとしたら

どんな要求だろうと聞いて差し上げねば・・・!

 

 

私「内容にもよりますが

  可能な限り対応いたします・・・!」

 

 

なんかもー

明らかに無理ってやつは

色んな所に電話をかけて仲介してあげたりもするらしいから

とりあえずなんでも聞いてみて

あのおじさんに回せば良い気がする

 

 

っしゃー!!!

 

来い婆ちゃん!!!!!!

 

 

婆「まずね!

  スイッチなんとかしたいのよ!

  スイッチにコード繋がってるでしょ!?

  あれが夏になると落ちてね!

  あ!今はやらなくていいのよ!?

  それは夏になったらね!」

 

 

????????????

 

 

ごめん

 

一個も分かんねぇわ

 

 

スイッチにコードが付いていて

それが夏になると落ちる???

 

何?

 

どういう事?

 

落ちる=ブレーカーかなぁ

とも思うけれど

だとしたらコードってなんだ???

 

いや

って言うか夏にやって欲しい事を今言うなよ

 

 

私「あの」

 

婆「それから電気が欲しいのよ!

  とにかく電気が欲しいの!

  今ね四角い箱みたいなやつになっててね

  そこに入れると出てくるんだわ!」

 

 

はぁぁぁあ!!!!?

 

 

頭の中に発電機が浮かんできた

 

ガソリンを入れると電気が出て来る

そういう事か・・・!?

 

いやいや!

 

でもいくらなんでも

自宅の電気の大元を発電機でまかなっている家なんて

存在するはずが無いだろ!!!

 

 

・・・あるのか・・・?

 

 

このド田舎だったら0%とは言い切れないぞ・・・?

 

んんんんん???

電気なのか電器なのかも分からねぇ・・・!

 

 

婆「ちょっと!?分かる!?」

 

私「あ、あの

  それは『電化製品』という意味合いの『でんき』ですか?」

 

婆「あーえっとねぇ

  なんてったっけねぇこれ・・・!

  あぁ!!!

  ポストさ!!!

 

 

ポスト・・・だと・・・!!!?

 

 

婆「四角いポストに2個入れるとね

  出て来るのさ!!!」

 

 

・・・・・・・・・えぇぇぇぇぇえええ!!!?

 

 

真っ赤なポストに

投函物を2つぶっ込んだら

入れた所からポーーーン!と投函物が飛び出してくる所を想像する

 

 

どういう事・・・!!!?

 

 

って言うか

さっきまで言ってた「でんき」と

今出てきた「ポスト」が全く結びつかないんだけど・・・!?

 

 

婆「だけどポストから出ないのよ!

  出て来なくなっちゃったのよ!」

 

 

それが正解だと思いますけどねぇ!!?

 

出て来る方がよっぽど異常事態だと思うんですけど!?

 

 

婆「それがねぇー30センチくらいのが欲しいの!

  30センチくらいの!

  ポストね!」

 

 

30センチくらいのポスト・・・?

 

 

思わず

手元にあった定規をスッとデスクの上に置いた

 

 

30センチ大のポスト・・・・・・・

 

 

私「・・・・・・・・・・・

  ポスト

  ですか」

 

婆「そうそうポストね!

  それからねぇあれよあれ!

  床に置いてる箱がね!

  あれがもう大分痛んでてねぇ!

  それも欲しいねぇ!」

 

 

婆「き(木?気??)も調子悪くてねぇ!

  変な音するんだわぁ~」

 

 

婆「ストーブのあれもやって欲しいねぇ!

  あれ!分かるっしょ!?

  この時期になったらやらないとならないからね!

  あぁでもこれはもうちょっと後でいいわ!

  でもストーブもあれやってね!」

 

 

もう

 

全然分からない

 

 

最初っから一個も分からないまま

もうこのお婆ちゃんの話を聞いて10分が経過しようとしている

 

何度か聞き返したり

何とかこう・・・

理解しようとして質問をしているんだけれど

それによって何か変化があったかっちゅーと

 

 

何の変化も無い

 

 

お婆ちゃんはひたすら

自分の言いたい事を言い続けるばかりで

私の質問というか・・・

教えて欲しいこう・・・えーっと・・・

 

いや!

 

全体的におかしいよね!!!?

 

「きの調子が悪い

 変な音がする」

って何!!!?

 

 

『き』!!!?

 

 

『き』って何!!!?

 

 

パソコンで『き』をあれこれ変換して

あらゆる『き』について考えてみるけれど

どれも変な音を出しそうには思えない

 

 

このままじゃラチがあかねぇ・・・!

 

直接このお婆ちゃんに合って

『これ』『それ』『あれ』を指差して言って貰わないと

きっと何ひとつわかりゃしねぇ!

 

だけど

このまま「とにかく分からねぇ」という内容のままでは

人に仕事を回す事は出来ない

 

 

これまでに電話で話しながら書いたメモを見ても

訳の分からない情報というか

「スイッチ」「でんき」「コード」「箱」「30センチ」「ポスト」

みたいな感じの名詞がただただ書かれているだけで

何ひとつ繋がる気がしない

 

 

せめて!

 

せめて何か一つくらい分かった状態じゃないと・・・!

 

 

私「一番お急ぎの案件はどちらでしょうか?」

 

婆「タストだね!!!」

 

 

た・・・タスト!!!!!!!

 

 

ちょっと待って!!!?

 

新しい言葉が出てきてより一層混乱するんだけど!?

 

 

私「た・・・タストですか・・・!?」

 

 

大慌てでネットで「タストとは」を検索!

 

すると

おしゃれな椅子みたいな物が表示された

 

 

う・・・嘘だ・・・

 

多分このお婆ちゃんそんなおしゃれな言葉知らんよ

 

タストはタストだったとしても絶対このタストじゃない・・・

 

 

婆「さっき言わなかった!?

  四角いやつで30センチくらいのねぇ

  横に2つ入れられるやつが欲しいのよ!」

 

 

んぁ!!?それポストじゃね!!!?

 

あんたさっきそれの事『ポスト』って言ってたじゃん!

 

横に2つ入れられるポストでしょう!?

でもそれ郵便局に言わないと無理じゃねぇかなぁ!?

 

 

というのは冗談で

 

多分これ『ポスト』じゃねぇわ

 

『タスト』でも『ポスト』でもない

何か違う名称の物を指しているんだと思う

 

くぅっ・・・!

 

うちの親もいつかこういう風に

訳の分からねぇ単語とか名詞を創作するようになるのかなぁ!

こえぇなぁ・・・!

 

 

ポスト・・・タスト・・・

そういうような響きの名前がついた物で

何かを突っ込むと出て来るもの・・・

 

しかも30センチ大のサイズの物体・・・

 

 

私「その・・・それは一体

  何の用途に使用する物でしょうか・・・?」

 

婆「焼くに決まってるでしょ!!?

  焼く以外になにするの!」

 

 

焼く!!!

 

何かを焼く物なのか!!!

 

入れると出て来る・・・

 

入れた物が出てこなくなると故障・・・

 

ポスト・・・タスト・・・

 

 

ハッ・・・

 

 

私「もしかして・・・

  トースターですか・・・!?」

 

婆「あぁそうかもねぇ

  そんな名前だったかもねぇ」

 

私「食パンを入れて

  焼きあがると出て来る・・・!」

 

婆「あぁそうそうそれさ!」

 

 

うぉおおおおおおおお!!!!!

 

当たった事がまるで奇跡・・・!!!

 

今までやった事があるなぞなぞの中でも

最も難解・・・っ!!!

 

 

婆「やっと通じたかい・・・はぁ・・・」

 

 

おいばばあ

「はぁ・・・」

じゃねぇんだよ!!!

 

『パンを焼くやつ』って言ってくれりゃすぐ通じたのに

ポストだのタストだの四角い箱だの言うから

余計訳分かんねぇんだろ!?

 

 

そもそも依頼してくる内容が明らかに畑違い・・・!

 

うちが電気屋だったら

もうちょっとそういう物も視野に入れて考えられたけど

まさか『トースターが欲しい』

なんて言って来ると思って電話出てねぇから・・・!

 

 

これが甘かったんだろうな・・・

 

3か月この会社に居たら

「もはやどんな内容の電話が来るか分かったもんじゃねぇ」

という事を理解出来ていて

これと同じ内容の電話を受けてもすぐに

「ふむ・・・恐らくそれはトースター!」

と一瞬で理解でき・・・る訳ねぇだろ!!!

 

10年ここに勤めていたとしても分かるようになる気しねぇわ!!!

 

 

もうとりあえず

30センチくらいのサイズで

2枚のパンを同時に焼けるトースターが欲しい

という1つの用件だけはしっかり理解出来たから

これで社内の何でも屋のおじさんに話を通したい

 

後はなんかもー凄い色々訳分かんねぇから

とりあえず家に行って直接喋って貰った方が絶対良い・・・!

 

このまま電話で喋っていても絶対無駄!!!

 

 

なんだけど

 

お婆ちゃん

 

 

全然電話を切らせてくれない

 

 

布団がどうこうとか

畳がどうこうとか

なんかもーとりあえず色々言いたい事言ってる感じ

 

 

うちの会社はあんたの息子でも孫でもねぇんだよ!

・・・と言いたい所なんだけれど

 

やっぱり年を取ってくると

誰に相談したら解決出来るのか

分からない(調べられない)問題が山積みになって

たくさんの事を我慢しながら生きるしかないんだろうな

 

なんて事を考えると切なくなってくる

 

 

孫になった気持ちでとりあえず聞いてやろうじゃないか・・・

 

 

 

20分ほどお婆ちゃんの話を聞いた後

 

ようやく社内の何でも屋のおじさんに

『30センチくらいの2枚同時にパンを焼けるトースターが欲しい』

『それ以外にもいっぱい頼みたい事があるらしいけれど

 物の名称が言葉に出来ないらしくて要領を得ないから

 トースターの話をするついでに直接会って話した方がよさそう』

という事を伝えた

 

 

すると何でも屋のおじさんは

「とりあえず行ってくらぁ」と言い残し

大きな背中で颯爽と会社を後にした

 

 

 

かっけぇぇぇ・・・!!!

 

 

『トースターが欲しい』なんて電話が掛かってきたら

普通は『電気屋へ行け』って伝えて電話を切るか

もしくは『迷惑電話だ切ってしまえ』

のどちらかだと思うよ・・・!?

 

 

・・・まぁ

この何でも屋のおじさんの仕事は

利益が全く無いor大赤字なんですけどね・・・

 

この小さな親切が今後の大きな仕事に繋がるかもしれないし

おじさんファイトー!!!

 

 

 

それから2時間後

 

ようやくおじさんが帰ってきて

笑いながら私の席へやって来た

 

 

おじ「何言ってるのか分からないし

   とにかくなんかもう色々頼みたい事あり過ぎて

   どーもならんかったわ」

 

私「あぁぁ・・・」

 

おじ「とりあえず電気屋連れて行って

   一緒にトースター選んで来た

   へへっ」

 

私「・・・・・・・・・・」

 

 

おじさん

 

 

私の車も調子悪いんで直してもらえませんかぁぁあ!!?